労基法には労働契約の定義がない。では、労働契約とは何か。民法には雇用契約に関する条文がある。簡単に言うと「仕事をすることにより給料をもらうこと」である。
事業主が、「明日からうちで働いてほしい」、労働者が、「はい、よろしくお願いします。」といった口約束さえあれば雇用契約は成立する。
ただ口で言われただけでは、働く人にとって非常に不安が残る。自分の給料はいくらなのか、1日何時間働く必要があるのか、休みはもらえるのかなどなど。
だから民法の一般法に対して特別法といわれる労基法において、労働者の保護を前提とした雇用契約時における各種の約束を、事業主に義務づけるのである。
労働条件の明示だけでなく、その他に当事者が了承している契約であっても、労基法で定める基準より低い労働条件は無効となること、労働契約の期間に関すること、実際の労働条件が契約したものと違った場合には、労働者は即時契約解除できること。
強制労働や人身拘束につながるような、損害賠償を予定する契約、前借金と賃金を相殺する契約、強制的に社内貯金させる契約など、労働契約において絶対にしてはいけないことも定められている。このように労働契約は、労基法に定められたことを含んだ雇用の契約といえる。
労基署は労働者の保護を業務の目的としており、労基法を事業所に遵守させるのが彼らの仕事である。働くことの入り口である労働契約についてシビアに確認するのもうなずける。労働契約があってはじめて労働者として保護を受けることになるからである。
ここまでの説明では労働者保護のためだけに労働契約が存在するようだが、書面により契約を確認することは、実は事業所にとっても重要なことなのだ。(つづく)
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