賃金不払残業に対する労基署の指導は、企業には労働時間規制の強化と映り、規制緩和を求める意見が強いことを前回指摘したが、引き続き規制緩和後の企業の取り組みを考えてみたい。
現在、企業間の競争がますます激化し、成果主義導入など人事労務管理も変わってきた中で、労働者の受けるストレスはますます増大する傾向にある。厚生労働省の「労働者健康状況調査(平成14年)」では、仕事や職業生活に関して、強いストレスがあるとする労働者は6割を越えており、ストレスの内容には職場の人間関係に続いて、仕事の量や質、会社の将来性などが並んでいる。
労働者に業務による明らかな過重負荷が加わることにより、脳・心臓疾患を発症したとして平成15年度に労災認定された件数は310件を超えている。また、業務による心理的負荷を原因として精神障害を発病し、平成15年度に労災として認定された件数は100件を超えており、うち約40件が自殺にまで至っている。
判例においては、企業が健康状態の把握やそれに基づく業務軽減措置を怠ったことにより労働者が脳・心臓疾患や精神障害などの疾病にかかった場合には安全配慮義務違反となるとされており、民事上、過重な労働負荷がかかった場合に労働者の健康確保を行うのは企業の責任として定着してきている。今や「ストレスは個人の捉え方の問題だ」「仕事のコントロールは自分でするべき」などの言い訳では企業は到底逃れることができない。
労働時間規制が緩和されたとしても企業の責任は依然として残るのであり、社員の自律的な勤務をベースとした上で、企業側のこれまで以上の労務管理が必要となる。すなわち全社員一律の管理方法では通用せず、個々の社員への細やかな配慮や対策検討、そしてその対応記録などをリスク管理として求められるようになると想像するのである。
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